◯
普段は使わない空き教室に、ちらほら生徒が集まりはじめ、半分以上席が埋まった。席は自由なので、私はなんとなく一番後ろの席に座った。復習したことを頭に詰め込み、机についてノートと睨めっこしながら追試が始まるまでの時間を待つ。
それにしても、追試の人、けっこういるんだな。予想していたより人が多くて、ちょっとホッとする。いや、安心している場合じゃない。気を抜くと覚えたことを全部忘れてしまいそうだ。
もうすこしで開始時間になろうというときだった。後ろの扉から入ってきた人物に、私は目を見開いた。
清水さんだった。
清水さんはキョロキョロと教室を見回し、こちらに向かってくる。そして、私の前の席に鞄を置いた。
ーーなんでそこ!?
思わず声が出そうになって堪える。すでに大方埋まっているけれど、ほかにも空いている席はいくつかあるのに、なぜ私の前に?
いや、きっと理由なんてないんだろう。私だってなんとなくここに座ったんだし。でも、目の前はやめてほしかった。せめて斜め前とか、もっと前のほうとか、私の視界に入らないところにしてほしかった……。
もちろん清水さんにとって私はなんの関係もないはずだし、そんな自分勝手な思いが通じるはずもないけれど。
悶々としていると、清水さんがくるりと振り返った。にっこり微笑んで、
「よろしくね」
と言った。
「えっ」
私はポカンとして目の前の美少女を眺めた。
よろしく?
なにをよろしくすればいいのだろう?
普通に追試を受けて終わりだよね?とくに話すこともないよね?
「よ、よろしく」
戸惑いながら、そう返す私。
天使みたいなその微笑みが、なんだか宣戦布告のような不敵な笑みに見えたのは気のせいだろうか。
普段は使わない空き教室に、ちらほら生徒が集まりはじめ、半分以上席が埋まった。席は自由なので、私はなんとなく一番後ろの席に座った。復習したことを頭に詰め込み、机についてノートと睨めっこしながら追試が始まるまでの時間を待つ。
それにしても、追試の人、けっこういるんだな。予想していたより人が多くて、ちょっとホッとする。いや、安心している場合じゃない。気を抜くと覚えたことを全部忘れてしまいそうだ。
もうすこしで開始時間になろうというときだった。後ろの扉から入ってきた人物に、私は目を見開いた。
清水さんだった。
清水さんはキョロキョロと教室を見回し、こちらに向かってくる。そして、私の前の席に鞄を置いた。
ーーなんでそこ!?
思わず声が出そうになって堪える。すでに大方埋まっているけれど、ほかにも空いている席はいくつかあるのに、なぜ私の前に?
いや、きっと理由なんてないんだろう。私だってなんとなくここに座ったんだし。でも、目の前はやめてほしかった。せめて斜め前とか、もっと前のほうとか、私の視界に入らないところにしてほしかった……。
もちろん清水さんにとって私はなんの関係もないはずだし、そんな自分勝手な思いが通じるはずもないけれど。
悶々としていると、清水さんがくるりと振り返った。にっこり微笑んで、
「よろしくね」
と言った。
「えっ」
私はポカンとして目の前の美少女を眺めた。
よろしく?
なにをよろしくすればいいのだろう?
普通に追試を受けて終わりだよね?とくに話すこともないよね?
「よ、よろしく」
戸惑いながら、そう返す私。
天使みたいなその微笑みが、なんだか宣戦布告のような不敵な笑みに見えたのは気のせいだろうか。