それからというもの、新作が上映される度に足繁く映画館に通うようになったのだが、次の週末は丁度その新作が上映される日に当たる。正直なところ、好きでもない遊園地に行くよりも『スナッフフィルム』が観たい。
目の前にいる美穂の様子を伺うと、その小さく可愛らしい唇がゆっくりと動くのを見守った。
「ホラーとか好きじゃないし! 」
「そんなこと言わないでさ、たまには付き合ってくれよ。お願い、この通り」
諦めきれない俺は、尚も食い下がって懇願する。
それにはちゃんとした理由もあって、この『スナッフフィルム』の上映期間が毎回三日間の限定上映だからだ。
いくらマイナーな作品だからとはいえ、短すぎるのもどうかと思う。なんだってこんなに短いんだ。
生憎と次の週末は休日出勤で仕事に駆り出される為、貴重な休みは一日しかない。美穂の提案する遊園地に行くことになってしまうと、『スナッフフィルム』の新作を見逃してしまうことになるのだ。
「いつも付き合ってあげてるでしょ! 今だって観てるじゃないっ」
「いや……。あのさ、映画館には一緒に行ったことないよね? だから行こうよ。ね? 」
「もう知らないっ!! 」
ついに顔を背けてしまった美穂。どうやら本気で怒らせてしまったようだ。
「ご、ごめんて……。あっ! じゃあ、来週! 遊園地は来週行こう! 」
できれば遊園地になど行きたくはないが、こうなってしまったら仕方がない。美穂の機嫌をとる為に懸命に話しかける。
それでも、今週末に遊園地に行こうとはどうしても言い出せないあたり、自分で思う以上に相当あの『スナッフフィルム』にハマッてしまっているらしい。
その後、美穂の機嫌が直ったかといえばどうにも怪しいものだったが、きっと明日になれば機嫌も良くなっているだろうと都合よく考える。
なにせ、石のように動かないこの俺が遊園地に行くと自ら約束をしたのだ。
美穂を家まで送り届けて再び自宅へと戻ってくると、来週の遊園地のことを考えて大きく溜息を吐く。
「まぁ、これもスナッフフィルムの為だ。仕方がない」
一人ポツリと呟くと、疲れた身体を休める為にそのままベッドへ倒れ込んだーー。