いっぽうの赤橋あやめはというと、
「ののか先輩みたいに何でも出来るようになりたい」
とダンスやボーカルのトレーニングをするのだが、どれも頭抜けて上手い訳ではない。
みな穂に知識で、太刀打ち出来る訳でもない。
それでも、
「昔の私みたいで、何かほっとけなくって」
と雪穂が気にかけていた。
「もっといろんなチャレンジをしてみたら、何か見つかるかも知れないよ」
かつて自分がそうであったように、雪穂は根気よくあやめと一緒に考えたりもした。
雪穂はあやめを放っておけなかったらしく、
「私もあなたみたいに、ダンス出来なかったんだ」
あやめにすれば信じ難いようなことを言った。
「だけど練習して、ときには優海や唯先輩に助けてもらって、だから上手くなれた。私が出来たんだから、きっとあやめちゃんも上手くなれるよ」
普段の雪穂は、とても穏やかで優しかった。