美波は拝むように、

「澪ごめんってば…でもさ、澪は結局は教育大だから市内じゃん」

「でもキャンパスのそばに部屋借りるから、実家にはなかなか戻れないかも」

 澪は少しだけ後悔した顔をした。

「ののかだって結局、医学部諦めたしね」

 それでもののかは横浜の私立大学へ進学する。

「来年は大変だよー、ネットに熱狂的なファンがいる藤子が卒業するんだからさ」

 藤子のネットファンの熱狂ぶりは少し異常なほどで、

「われらの藤子様」

 などと崇拝までしている者さえある。

「藤子がずる賢くなくて良かったわ。あれであざとかったら、間違いなく犠牲者が出るとこだった」

 美波の落語みたいな口調に思わず澪は吹き出した。

 卒業で離れ離れになるはずなのに、悲しくなかったのは美波のおかげであったかもわからなかった。