別に留年じゃないよ、と前置きしてから、

「先生に頼まれて、コーチすることになってさ」

「仕事は?」

「すみれの事務所にアルバイトで雇ってもらうことになった」

 澪は黙り込んでから、

「私、美波が東京にいるって思ったから、東京の大学受けたんだよ?!」

 泣き笑いしながら美波を小突いた。

「なんで大事なこと言わないの!」

 澪は泣きながら美波の肩ををポカポカと叩いた。

「そんな叩かなくたって…サンドバッグじゃないんだしさ」

 ジョークも澪の笑いにはつながらなかった。