卒業式が終わり、ホームルームで全員に証書が渡されて、下校する刻限になった。

 それまで笑い声に包まれていた部室も、

「澪先輩…うぅぅ…」

 また優海が泣き出した。

「初めの頃はあんなに生意気だったのにね…」

 ののかに食ってかかったり、唯と口論したり…でもなぜか藤子にだけは逆らわなかった。

「きっと、苦手意識があるのかもね」

 意外にも泣かなかったのは雪穂で、

「だって近所だし、多分夏には帰省で会うだろうし」

 違和感丸出しの態度ながら、

「雪穂は変わらないね」

 澪は微笑むだけであった。

「教育大前駅からなら、家まで電車一本だし」

 雪穂と澪の実家は八軒駅と琴似駅の中間あたりだから、確かに会えない訳でもない。