何と、たたまれた答辞を開かずに置いたのである。

「私はアイドル部部長でもあります。まずみなさん、私が来ることは場違いであることを謝りたいと思います。申し訳ありません」

 深々と頭を下げてから、みずからの言葉で語り始めた。

「それでも、私が答辞をすることになったのは、私たちアイドル部を応援してくれている、たくさんの在校生や仲間たち、ファンの方たちのおかげです。本当にありがとうございます」

 澪はマイクを直した。

「とりわけ前任の安達生徒会長や先生方、そしていつも見守ってくださった在校生のみなさん、さらにはネットの生中継でご覧になっているファンの方々のみなさんには、ひとかたならないお世話をいただき、アイドル部一同を代表してお礼申し上げます。さて」

 澪はひと呼吸おいてから、

「このあと私たちライラック女学院アイドル部は、私を含め三年生が参加する最後のステージを行います。これはお世話になったみなさんへの感謝の気持ちを込めたパフォーマンスとなります。どうかみなさん、この卒業式の良き日の思い出の一つとしていただければと思います」

 ありがとうございました、と澪は締めくくると演壇を降りた。