例の雪穂の一言がかなり効いたものか、始業式が過ぎて三学期が始まっても瀬良翠の反撃らしいものはなく、

「雪穂砲」

 とアイドル部内では呼ばれていた。

 いっぽうで。

 ネットでは私設のファンサイトが出来、それぞれの推しメンバーのコミュニティも出来上がるほどの盛り上がりを見せている。

 初期メンバーを知るあたりは藤子、リラ祭から知るあたりは雪穂、その後の活動露出が増えたあたりからは優海を推すファンが多いというのが、大方の分析であった。

 二月の雪まつりのステージライブが決まっていたので、

「このときには附属の子たちの合否が分かってるから、合格してたらお披露目だね」

 さらにすみれのソロデビューが決まったので、

「すみれちゃんはソロのナンバーも覚えないとね…」

 もっとも、すみれはモデル経験があるだけに、唯も不安はなかったようである。

 三学期が始まってすぐ、朝練に来たすみれはどこかで聞き慣れないドンッ、という音を聞いた。

 音を頼りに行ってみると、清正がいる。

 グラブを手に、何度もフォームを確かめながら、除雪の山に刺し立てた板に向かって、勢いよくボールを投げ込んでゆく。

「…橘くん、おはよう」

 すみれに気づいたらしかった。

「すごい早いですね」

「一応最速が全盛期で百四十五キロやったからね」

 今なら百三十ちょっとぐらいかな、というと、左腕をしなやかにたわませながら、踊るように躍動しながらストレートを投げ込んでゆく。

「少しは体力維持しとかんとね」

 すみれは間近で初めて見たのだが、これでも甲子園で初戦敗退だったというから、現実のむごさを感じたらしかった。