部室に戻ると、

「雪穂ちゃんさ、機嫌悪いの?」

 恐る恐る優海が訊いてきた。

「何もだよー」

 雪穂はいつものホンワカした雪穂に戻っている。

「あ、さっきの?」

 あれはね、と雪穂は、

「パパから教わったの」

 雪穂の父親は、札幌では知られた建設会社の代表取締役である。

 荒くれのガテン系たちを束ねる父親を見て育ったからか、可愛らしい見た目に反して、言葉の厳しい側面があるようで、

「だから、ああいったときには、前の人と比べてあげたらいいんだよって」

 ニコニコしながらそんな話をする雪穂を、優海は少しだけ恐ろしく感じた。