そこへ。

「ちょっと、何してるの?」

 怒りを含んだ声がしたので振り向くと、なぜか生徒会長の瀬良翠がいた。

 生徒会の登校日ではないはずである。

「だから、今何をしていたのって訊いてるでしょ?!」

 ヒステリックな翠に、

「卒業式ライブの立ち位置確認です」

 すみれが冷ややかに答えた。

「附属の子まで巻き込んで、どういうこと?!」

「彼女たちは体験レッスンです」

 すみれがクールに言えば言うほど、翠の目は釣り上がった。

「これだからアイドル部は…」

 するとボソッと雪穂が、

「前の安達会長のときには、そんなこと言われなかったんですけどね」

 とだけ言った。

「…!!」

 翠の体がぐらついたように見えた。

「それに私たちは学校の許可をもらってます」

 優海が許可証をこれみよがしに翠に突き付けると、

「まぁ今日だけは、見逃してあげるわよ!」

 翠は逃げるように駆け去った。

「…何あの子」

「何か情緒不安定ですけど…何かあったんですかね…?」

 マイペースな雪穂は、いつもの調子に戻っていた。