澪が鍵を開ける支度をしていると、

「おはようさん」

 古びた野球のユニホームの上着を羽織った清正が来た。

「おはようございます!」

 三人が元気よく挨拶すると、

「じゃ、掃除しようか」

 バケツやスポンジ、箒など手にした四人で部室の清掃を始めた。

 思ったより狭いが、何よりここがこれから自分たちの城になる──澪は感慨にふけりたかったが、そうもいかない。

 だが、今までの物理器具室では大っぴらにライブのDVDやらブルーレイなんぞは置けなかったので、これからは誰に憚ることなく観賞したり、振り付けの研究が出来るというのは幸甚であったろう。

 そこへ。

「グッチー、来たよ!」

「あ、来たんだ! 美波、ありがとー」

 テニスの練習着姿で来たのは、隣のクラスながら仲の良かった(いぬい)美波である。