来年度のハマスタのエントリーシートが届いたのはクリスマス前であった。
「とりあえず記入漏れはないから、あとは出しとくわ」
何事もなければ予選は四月である。
「美波がいれば強いんだろうけど…」
澪は美波のアクロバティックなパフォーマンスを補足したいと思っていたらしい。
「冬休みはミーティングどないする?」
「今度部室も拡張工事だもんね…」
ののかの言う拡張工事とは、隣の廃部になった文学研究部との壁を潰して面積を倍にする工事の話である。
「人数増えてきましたからね」
千波がしみじみ言った。
「優海ん家が広いから、そこでしようかなって。もちろん先生も来ますよね?」
優海の家は発寒だが、敷地が広く畑や倉庫もある。
「確か屯田兵の家なんだよね」
教科書で出てくるようなワードが、すみれの口から出てきた。
「うち、倉庫だけは広いんだよね。おじいちゃんの代まで玉ねぎ作ってたし」
優海の父の代になって畑を一部マンションにしたのだが、駅から近かったのもあってすぐ空き部屋が埋まり、倉庫は今ではフリースペースとして優海が練習したり、たまに雪穂やすみれが来て三人で集まったりしている。
「でも澪ん家みたいに庭広くないから」
ちなみに澪の家は仕事は今はサラリーマンだが、タイミングよく分譲を買えたらしく、家の割に庭が広い。