マヤはイラストも本格的に描く。
「別に絵で食べていきたい訳ではないんだけど」
とは言うものの、「孔雀の海老原」と呼ばれ孔雀図を得意とする日本画家・海老原覇陵の娘というだけあって、背面いっぱいに白孔雀を自ら描いた、ダンス練習用の黒Tシャツは人目を引いた。
「まるで何かの入れ墨みたい」
優海が言うとマヤは、
「あなたにもデザイン違いだけどあげるね」
と黒Tシャツをくれたのだが、開いてみると白い孔雀の脇に、
「止めてくれるなおっ母さん
背中の孔雀が啼いている
女一匹 何処へ往く」
と書いてある。
「こっちのほうが、よっぽど入れ墨みたいだよね」
唯が腹を抱えて笑った。
優海は最初、
「私に対する当てこすり?!」
などと怒っていたが、しばらくして気に入ったのか、体育の授業でそれを着て、優海はバドミントンをしていた。
「あれは優海のことを言った訳じゃないんだけどね」
どうやらマヤには、そうしたイタズラっ子な一面があるらしい。