様々な意見が出た中で、
「じゃあ、澪は?」
現職の澪に、ののかが訊いた。
「私は藤子と同じ。でも雪穂よりは唯かな」
理由は、明快そのものであった。
「私は藤子じゃちょっと線が細い気がする。唯は私と違って意見はハッキリ言えるし、藤子は繊細な分、彼女に何かあったらチームも壊れそうで」
そもそも澪は、じゃんけんで負けて部長になっている。
なので最初から他人を掻き分け押し退けしてまで上に立つような思考はなかったらしく、それだけに誰にリーダーシップがあるか、考えていたようである。
「やっぱり見てるわ、ちゃんと分かってるね」
ののかは相槌を打った。
「それに唯が動、藤子が静って感じだしね」
「それじゃ、唯で決まりでいい?」
しばらく何も言語らしい言語を発しないまま、唯は顎に手を当て何かを考え込んでいたが、
「リーダーに向いてない気もしないではないけど、でも出来るだけのことはする」
覚悟を決めたようであった。
新しい部長の唯は、言葉や行動で引っ張るようなタイプではない。
どちらかといえば、
「共に進む仲間」
という意識であったようである。
よく唯は「仲間は信じるもの」というワードを多用する。
飜すと、自分がトップの器でないことを理解していたから言えたのではなかろうか、とさえうつる。