十月になると、校舎の周りは紅葉が見事になる。
ナナカマドに山桜の赤、板屋楓の黄色、クヌギの茶色、そして色づかないイチイの緑。
他の学校にはなかなかない美しさで、見学のときの風景と、古風なセーラー服の可憐さで決めた高校ではあったが、ダークグレーのセーラー服に、スクールカラーのライラック色のリボンという一風変わった制服なだけに、どこへ行ってもすぐ、
「あ、ライ女だ」
と分かる。
学年の見分け方は校章で、今はモスグリーンが三年、二年は臙脂色、一年は鉄紺と学年ごとに決まっており、三年生が卒業すると次は一年生がモスグリーン…というように入れ替わる。
ついでながら。
二年生の唯と藤子は関西へ修学旅行に行っているので、一年と三年しかいない状況である。
基本的にアイドル部はトレーニング時は部活用のジャージなるものがなく、授業用の体育着で走り込んだり、ダンスを練習したりする。
ただし中のシャツは自由で、このところアイドル部は自らのカラーが決まっていたのもあって、例えば澪は緑でののかはピンク、藤子は水色で唯は黄色…といったように自然とカラフルになっていった。
とりわけののかのピンクは華やかで、
「自分でステンシルで染めてみた」
というそれは、淡い桜色の地の背面いっぱいに、ののかが自分で描いたオリジナルの天使の萌えキャラを染め上げた大作で、
「なんだかんだいって、染めるまでに三日ぐらいかかった」
それでも三日で済ませるあたり、ののかの根性のほどがうかがえた。