清正は続けた。

「部室の鍵は予備の鍵を作っておくように」

 それと、と畳み掛けるように、

「あと、土日休みに掃除をする予定やから、汚れても構わん服を支度しとくように」

 始業式では気づかなかったが、少しだけ関西弁が混ざっていることに澪は気づいた。

 職員室を出ると、

「嶋先生ってさ、意外に小柄だよね」

 澪は言った。

「でも怖い先生ではなさそう」

 関西弁は怖いというイメージがあるらしく、澪は去年の修学旅行で春日大社に行った際、関西弁でナンパされたのだが、そのあまりの怖さに泣き出してしまい、目撃情報を得た警察官が駆け付けて保護されたことがある。

 話が、逸れた。

 ののかは続ける。

「あと指輪してたから、結婚はしてるよね」

「目ざといなぁ」

「だから、恋愛にはならなさそう」

 澪はハッとした顔で、

「アイドルは恋愛厳禁だもんね」

 言いながら何か可笑しかったのか笑い出した。