美波の件は、澪が部室でメンバーに伝えた。

「まぁ美波らしいというか、しょうがないというか」

 などとののかは笑っていたが、

「そんな意識ではオーディション勝ち抜けるかどうか分からないですよ」

 特にすみれは厳しいことを言った。

「私なんかオーディション何回も落とされてるから分かりますけど、要はプロ意識がないと使い物にならないらしいんですよ」

 などと、耳の痛くなるようなことを平然と言った。

 確かにすみれの言う通りではあるが、別にプロを目指すという意識はののかにはなかったらしく、

「意識高いと違うわぁ」

 僅かなズレのようなものは感じたようであった。

 当たり前といえば当たり前なのだが、

「あれだけダンスやトレーニングで世話になっておいて、よくそんなことが言えたもんよね」

 優海はチクリと刺すように言った。

 すみれはやり返した。

「恩義は恩義だけど、事実は事実でしょ?」

 事実を言って何が悪い、というような態度を隠そうとはしない。

 すみれと優海は睨み合った。

「…もうさ、止めにしない?!」

 雪穂が珍しく割って入った。

「あんたたちさ、なんかっちゃあ口論ばっかりしてるけど、ホントのところはどうなの?」

 二人は一瞬ひるんだ。

「実際はさ、二人よりずっとダンスの上手い目の上のタンコブがいなくなって、せいせいしてたりするんじゃないの?」

 雪穂がたまに繰り出す毒舌が撃ち込まれた。

「私は美波先輩に助けてもらってばっかりだったし、ダンスだってボーカルだって二人より上手くなんかない。だけど助けてもらった人を口撃したことはないよ」

 ドがつくほどの正論を打たれ、二人は返す単語すらなかった。