体育祭の日。

 それぞれスコアやタイムの記録、あるいはメダル授与のサポートにアイドル部は回った。

「さっき有澤雪穂からメダル渡してもらったさ」

「いいなー」

 誰かが話す声がする。

「…やっぱり、参加したいよね」

 美波は仮設テントでグランドを眺め渡しながら、溜息をついた。

「でも、参加しちゃ駄目なんですよね?」

 ペアを組んだすみれが訊いてきた。

「ちょっとぐらいなら分からないかな」

 それはさすがにルールにそむく行為で、すみれは嫌な顔を隠さない。

「行くなら先輩だけ行ってください。私は参加しないですから」

 すみれには意外と堅物な面がある。

 そんなとき。

「美波、ちょっといい?」

 クラスメイトの声がしたので、

「ちょっと行ってくる。多分あの子だから何か手伝ってって感じなんだろけどさ」

 美波は席を外した。

 すぐにすみれも、

「ハードル片付けるのお願いしていい?」

「はーい!」

 席を立った。

 片付け終わると美波がまだ戻らない。

「まさか、マジで球技とか参加してなきゃいいけど…」

 すみれはペットボトルの緑茶を一口飲んだ。