少し話を戻す。

 職員室の並びにあった生徒会室へ澪と藤子が行くと、

「久しぶり!」

 いたのは茉莉江である。

「アイドル部、すごい人気ね」

 私も任期終わったら入ろうかな、と冗談めかした。

 茉莉江がアイドル部に理解があるということも、今回の対応にはプラスとなっている。

「今回からアイドル部がサポートに回ることになって、でもどうしたらいいか分からないし…」

 澪は言った。

 茉莉江は一枚の資料を出して、

「こちらで考えたのは、表彰のメダル授与のサポートとか、タイムとかスコアの記録の手伝いとかなんだけどいい?」

「ありがとう」

「でもねー、実はあんまりアイドル部を現場に出さないでくれって言われてて」

 茉莉江は内幕を話してくれた。

 どうも学校側では、

「グッズ販売とかも考えてるみたい」

 それは別にまだ良い。

「で、だから怪我されたらマジで困るみたいで」

 校歌のCDを作ってアマゾンで販売するぐらいなのだから、グッズぐらいは訳なく作りそうであろう。

 とは言え。

「外聞ばっかり気にして、結局は大人って金儲けとかしか頭にないから、バランスってのが分からないんだよね…」

 茉莉江が言うバランスとは「私益と公益が釣り合わないと、最後は破綻する」という意味を指す。

「だからこれからは、アイドル部だって楽しいだけじゃダメだし、でもアイドルゲームみたいに銭ゲバみたくファンから搾取するだけでもダメだし、バランスが大事になるんだよ」

 茉莉江の眼には何か違う世界が見えていたらしい。