九月に入ると、体育祭がある。

 その体育祭では、一つだけ問題があった。

 従来アイドル同好会時代、澪たちメンバーは競技に参加していたのだが、今のように知名度が上がってきていると、

──下手に怪我なんかさせたら何を言われることか。

 事実、東京の同じようなスクールアイドルが体育祭で怪我をしたところ、契約しているレコード会社から損害賠償請求が来たというニュースもあって、

「今年からアイドル部は生徒会のサポートに回ってください」

 との指示が出たのである。

「いや、普通に参加させてもいいよね?」

 というアイドル部の当事者たちの意向が、学校のいわゆる大人の事情という代物にかき消されたのである。

「せっかくの体育祭だったのになぁ…」

 美波はガックリと肩を落とした。

 逆に、

「体育祭ちょっと苦手だったから、なんか助かった」

 と藤子は喜んだ。

「世間がみんな、体育祭が好きだなんて思わないで欲しいな」

 こういうところはやはり文学少女で、

「私は図書室で大人しくしてるから」

「何言ってるの? 藤子だけ特別扱いするわけにはいかないんだから」

 最終的に藤子は記録担当に回った。