翌朝。

「おはよー」

 いつものようにさりげなく、しかし気丈に振る舞う藤子に、澪とののかはぎこちない返事しかできない。

 澪も思わず、

「好きなことを好きなようにやろうとすると、こんなに苦しいんだね」

 あまり弱音を吐かない澪の本心に、ののかは、

「だから達成感が半端じゃないんだよ」

「…えっ?」

 澪は向き直った。

「だからさ、私たちは藤子の分まで頑張らなきゃいけないんだって」

 ののかは本心を悟られまいとして、つらいときほどわざとおどける癖がある。

 しかし今のは本音かもしれない、と澪は感じたのか、

「うん!」

 明るく返した。



 合宿の最終日、全員で日和山の灯台まで来ると、

「ね、みんなで写真撮ろ!」

 澪は清正に、デジタルカメラを渡した。

 清正はさらに近くにいた鰊御殿の警備員に、

「すいませんが、シャッターお願いできますか?」

「もちろん」

 そうしてメンバー八人と清正で数枚、メンバーだけでさらに数枚撮影すると、

「札幌に戻ろう」

 澪はカメラを手に、メンバーと共に坂を降りてバス停へ向かった。