黙って、みな聞いていた。
しばし沈黙があったのを破るように、
「…藤子、なんで我慢してたの!」
たまらず唯が叫んだ。
「あんたって昔からいつも、なんで我慢ばかりするの?」
昔からそうじゃない、と唯は、幼なじみらしく小学校の給食でプリンが出たときの話をし始めた。
「ガキ大将にプリン取られて、普通の子なら泣いちゃうようなシチュエーションなのに、藤子ったらうちで食べるからいいよって。ホントは悔しいくせに絶対に泣き言なんか言わない」
逆にそうした藤子だから、アイドル部に安心感と落ち着きを与えていたのかも知れない。
そんな藤子がマネージャーになる…という意味がどれほどであるか、それを唯は、痛いほど分かっていたらしい。
「だからどれだけ、悔しくてつらいかを分かるから…だから…」
抑え切れなくなったのか、唯は目を憚ることをしようともせず、声を放って哭いた。
みな人間が本気で泣くのを、初めて見たような気がした。