合宿も終わりに差し掛かった七夕──北海道は八月七日である──の夜、ミーティングが終わると、

「あの、…ちょっといいかな?」

 藤子が手を挙げた。

「どうしたの?」

 基本的に藤子は積極的な発言はしない。

 人から訊かれれば的確に答えるが、かといって余計なことは言わない。

 その藤子が、自分から発言するのは椿事であろう。

「私ね…マネージャーになろうかと思うんだ」

「…マネージャー?」

 爆弾発言に一瞬、理解ができなかった。

 が。

 普段おっとりした雪穂が即座に反応した。

「藤子ちゃん、正気?」

「うん」

 冷静に藤子はうなずいた。

 ずっと考えていたことらしかった。

「私ね、合宿で気づいたんだけど…タイムキーパーとか事務とかやって、こっちが向いてる気がしたの。それに私、ダンスちょっと駄目になってきてるし」

 例の捻挫のあと、藤子は左の足首に違和感を抱えるようになっていたらしい。

「だけどみんなのことが大好きだから、それならマネージャーになろうって」

 藤子の言葉の端々には、固い決心が漂っていた。

 実のところ藤子には、言い出したら引かない面があって、達観と言えるほどまで俯瞰できるだけに、決めたら動かない頑固さすらある。