しばらくして。

 部室に再び、美波があらわれた。

「なんか、雪穂が来いって言うから…」

 美波はなぜか帽子をかぶっていたが、照れ臭そうにうなじを掻いた。

 おもむろに帽子を取ると、

「…!?」

 肩胛骨まであった髪を、何とショートカットにしてあるではないか。

「…髪切った?」

 思わずののかが訊いた。

「何そのタモさんみたいな訊き方」

 ののかの表現があまりにハマったので、笑い過ぎで澪が椅子から崩れ落ちそうになった。

「十年ぶりにショートにしたさ」

 ショートカットにすると、美波の健康的な雰囲気がより強まって、むしろ爽やかな色気が加わったように見えた。

「これはますます雪穂と怪しい関係って疑われるよね…」

 優海のシャープな指摘に、再び澪が笑い出した。

 立てない。

「こ、…腰抜けた」

 どうやら力が入らないらしく、すみれが手を差し伸べてようやく澪は起き上がれた。