雪穂は美波の目を凝視すると、

「夏休みの合宿…来てくれますよ、ね?」

 雪穂が繰り出す上目遣いのウィンクに、

「う、うん」

 たじろいだ美波は思わずうなずいた。

「じゃあ、また一緒にいられますよ…ね?」

「う…うん」

 雪穂の言葉のチョイスはたびたびあらぬ噂や誤解を招くのだが、これでは完全に間違えた認識になってしまう。

 それは美波も悩ましい。

「…良かったぁ」

 雪穂は美波の手を握ると、

「必ず来てくださいね、美波先輩」

 雪穂はようやく、ホッとした様子を見せた。

「…まったく、雪穂って小悪魔だよねぇ」

「?」

「こないだのリラ祭もそうだけど、雪穂は女優さんになれそう」

「私はアイドルのままがいいなぁ」

 美波はすっかり、雪穂の振る舞いに蕩かされたようなところがあった。

「あれは小悪魔にたぶらかされたね、完璧に」

 などとののかにからかわれたが、ともあれ退部だけは避けられた格好となった。