部室へ戻ると、

「じゃあ、多数決で決めよう!」

 重たいままの空気を振り払うように、澪が声をことさらに張った。

「まずは、アイドル部がいいって人!」

 挙手したのはののか、唯、優海、雪穂、すみれ。

「じゃあ、リラっ娘の人!」

 澪と美波だけが挙げた。

「藤子は?」

「私は…名前なんかより、ここにいるみんなが一緒なら、どちらでもいい」

 藤子は名前より大事なものがある、と言いたかったのかも分からない。

「だけど美波ちゃんの気持ちも、痛いぐらい分かるから、どっちかに決めるなんて、私は出来ない」

 それより、と藤子は、

「こんなことで喧嘩なんかしないで欲しい。さっきから何かピリピリしてるし」

 藤子は美波に向かって、

「まさか美波ちゃん…辞めないよね?」

 美波は絶句したままである。

 何か藤子に見抜かれたように察せられたのか、美波は顔から血の気が引いてゆくことを、どうすることも出来なかった。