リラ祭を数日後に控えた火曜日の放課後、部室で集まって休憩していると、

「失礼します」

 と、生徒会の腕章を巻いた女子高生が入ってきた。

「生徒会長の安達です」

 と名乗った。

 安達、名は茉莉江。

 美波とは同じクラスだが、美波は話したことはほぼなかった。

 茉莉江は生徒会長にしては珍しく、自分の意見では動かないという変わったやり方を取っていた。

 合議で方針を決め、それを実行する。

 それだけに周りからは「定見がない」と言われたこともあったが、茉莉江は「我を張るよりはいい」と意に介さない。

 その茉莉江が、

「実はみんなに頼みがあって…」

 と頼んできた。

 みな、よほどのことと見たらしく、固唾をのんだ。

「リラ祭で、これは生徒会に来た投書での発案なんだけど、みんなの人気投票をするという話があって」

 これには一同かなり動揺したらしいが、茉莉江は続けた。

「さすがにそこは、みんなの許可を取らないわけにはいかないから、それで取りに来たの」

 この律儀さが、歴代生徒会長では屈指の明君と呼ばれた、茉莉江の茉莉江たる所以であった。