しかし、である。

 時間がない。

 五月の連休明けの段階でのことなので、

「でも今のペースで練習してたら、六月のリラ(さい)には間に合わないかも…」

 美波の言うリラ祭とは文化祭のことで、同好会時代からメンバーが出演するステージがある。

「特に今年は部になって初めてだし、みったくないことなんかしたくないし…」

 ののかも、そこは気がかりであったらしかった。

「三人のときには、どないしてたん?」

「出来るだけ間隔を広くして、大きくステージを使うようにはしてました」

 澪が答えた。

「じゃあ今年は七人やし、逆にメンバーを覚えて貰うつもりでやってみるっちゅう手はあるけどな」

「例えば…どんなのですか?」

 藤子が訊いた。

「ファンミーティングみたいのとかどうやねんな?」

「むしろ、他のグループがやってないことをやったほうが、私たちのカラーを出せるのかなって」

「どんなんするん?」

「コメディみたいのもありかな、って」

 藤子の発言に一同が目を剥いた。