「今度は曲をかけてやってみよう」

 やはり雪穂だけ半拍ずらすと、綺麗にフォーメーションが整う。

「…私、向いてないのかなぁ?」

 雪穂は少し後悔したような気がしたらしいが、

「雪穂、これは体で慣れていくしかないから、最初から上手くゆく天才なんて中々いないって」

 ののかが優しく肩に手をやった。

「先輩…」

 雪穂は泣きそうな顔をしていた。

「有澤くん、早く出来ればえぇってもんやあれへんで。拙速は誰でも出来るけど、確実にやろうとする根気は誰しもある訳やない」

 大丈夫や、と清正が穏やかに諭すように語りかけた。

「とにかく頑張ってみます」

 はるかな後の話だが、このときの雪穂の努力の甲斐もあって、ダンスは指折りの名手となった。