部室には澪も来ていた。

「藤子ちゃんらしい答辞だったね、健やかにあれよかしだなんて」

 あれはみな穂が提案した、と告げると、

「来年は答辞はこれで行けばセラミックスだから、まぁハードル爆上げだよね」

 マヤが早くも予言めいたことを言った。

 そこへ。

「卒業おめでとう」

 久々に安達茉莉江が来た。

「あのね…今度結婚するんだ」

 唯だけは気づいている。

 藤子は別の意味で理解していた。

 清正が来た。

「…ってことは、茉莉江ちゃん、大名家の奥方様になるってこと?!」

「まだ安定期じゃないんだけど」

 メンバーすべて瞬時に固まった。

「安定期ってことは…場合によってはお世継ぎ?!」

 何だか事態が渋滞しているようにも見えた。

「先生ったら…口で言うより手のほうが早いってヤツ?!」

 マヤの地口ともツッコミともつかない返しに、

「まぁ確かに手は付いたか」

 悪びれる様子もない。

「式は六月のリラ祭の後だから」

 茉莉江の宣伝も抜け目がない。

 盛り上がってしゃべるうち、チラチラと小雪が舞い落ちてきた。

「あ、雪」

 藤子は空を見上げた。