卒業式は、荘厳な雰囲気で始まった。

「澪ちゃんのときから、一年しか経ってないのにね」

 小声で隣の唯に、藤子はつぶやいた。

「国歌、並びに校歌斉唱」

 全員が起立。

 斉唱が済むと着席。

「来賓挨拶」

 今年は、長谷川マネージャーがいる事務所の社長も来ている。

「証書、授与」

 緊張が走った。

 聞き慣れた清正の声で、

「生徒総代、萩野森唯」

「はい!」

 唯が起立し、演壇へ歩いてゆく。

 校長から卒業証書を渡される。

 唯が受け取る。

 演壇から降りてくると、

「めっちゃ緊張したー」

 ほぼ声にならない声でささやいた。

 続いて校長挨拶。

 さらに、祝電祝文披露。

「送辞、在校生代表、瀬良翠」

 久しぶりに翠を見たような気がした。

「答辞、卒業生代表、長内藤子」

「はい!」

 藤子は起立し、演壇に立った。

「答辞」

 藤子は紙を見ずに話し始めた。

「この度は卒業式にご参列いただきありがとうございます。私たち卒業生一同は、これより進学並びに就職し、社会へと旅立ちます。様々な人たちに支えられながらここまで来られたことに感謝し、これからも仲間を信じ、偽ることなく、人生を歩んで行きたいと思います。どうかこれからも、一同心身健やかにあれよかしと願いつつ、答辞といたします」

 簡潔ながら個性ある、藤子らしい辞である。