それで、と藤子はみな穂を招いて、

「みな穂には、あなたらしく部長をやって欲しい。先輩もいるから気を遣う箇所もあるけど、くじ引きであなたがいちばんで部長を引き当てたのは、私はみな穂は強運だから引いたんだと思う」

 みな穂は真剣に聞いている。

「芸能とかの世界は引きや運も力のうちで、あなたにはそれがあるから、気にしないであなたの思うように活動して欲しい」

 藤子の言葉を、みな穂は漏らすまいと必死に聞いていた。

「それと…あやめちゃん」

「はい」

 あなたにお願いがある、と藤子は言った。

 あやめは目が潤み始めている。

「あなたは人の痛みがわかる人だからお願いがあるんだけど、みな穂をしっかりサポートして欲しい。みな穂は少し線が細いから、必ずあなたの助けが要る日が来る。そのときには支えてあげて」

「はいっ!」

 目には涙をためながら、それでもあやめは笑みを浮かべた。

 振り返ると、優海は泣いていた。

「優海は強さと脆さがあるから、その脆さが心配ではあるけど、でもあなたは歌唱力はあるし、ダンスも出来るから大丈夫。あとは自身を信じること」

 余計に優海は泣きじゃくってしまっている。

 あやめの隣にいたすみれには、

「すみれちゃんは分かってるはずだけど、あなたのおかげでプロって意識の大事さはみんなわかったし、だからここまで来れた。あなたがいなかったらアイドル部はなくなっていたかも」

 すみれは藤子が認めてくれていたことに驚いた。

「たまには人に優しく、ね」

 藤子のウインクにすみれは涙腺が崩壊した。

「雪穂の努力は私は一番買ってた。しかもクレバーだからいつも冷静。ちゃんと自分で答えを導き出せている。あんまり世の中にはいないタイプだから誤解されやすいけど、あなたなら大丈夫」

 日頃泣かないし怒らない雪穂だが、このときばかりは顔が歪むほど大泣きしたので、

「雪穂の目に涙」

 と呼ばれた。