翠が生徒会に戻ってほどなく、茉莉江が部室にやってきた。

「茉莉江先輩が来るなんて珍しいですよね」

 この日は藤子が相手をした。

「今度ね…実は彼氏が出来てさ」

「…えっ?!」

 藤子は耳を疑った。

「いや別に大した話じゃないんだけど、…まぁどうなるか分からないし、連絡つきにくくなったら、彼氏と話してるとでも思ってくれたらいいかなって」

「…でも彼氏かぁ」

 考えたこともなかった、と藤子はしみじみ言った。

「だって藤子ちゃんは今やみんなの藤子ちゃんなんだから、彼氏なんか出来たら騒ぎになっちゃうよ」

 確かにそうかも知れない、と藤子は気づいた。

「その点私は普通の子だから、誰にもなんにも言われないし」

 茉莉江はクスクス笑った。

「いつか紹介してね」

「彼、こないだちょっと怪我したから、治ってからでいい?」

「うん」

 藤子はあっさりし過ぎている面がある。