みな穂はよく、
「私なんか…」
という口癖があった。
どちらかといえば引っ込み思案で、前にグイグイ出るほうでもない。
おまけに人見知りでもある。
なので最初はしゃべることもなく、
「みな穂、あんた大丈夫?!」
気遣われることもしばしばである。
そんなみな穂が新部長、である。
「私なんかが部長で、アイドル部に何か遭ったらどうしよう…」
「そのために私たちがいるじゃない!」
優海が肩をぽんと叩いた。
このアイドル部という組織は女の園というより、どこか甲子園を目指す野球部のような、一種のチームとしての論理が働いているところがある。
誰かがピンチの際には他のメンバーが助け、それによってチームがパワーアップする、という効果をもたらす。
しかし。
一人でも身勝手なことをすると、それはチームの力を削ぐとして、排除までは行かなくても、疎外されても抗弁出来ない…というのが、どうしてもある。
つまり落伍者には厳しいのである。
その点でみな穂は、武器があったので難局を乗り切れたのかも分からない。