夏休みが終わった頃、部内では新しい部長をどうするかを、考えなければならない時期に差し掛かっていた。

 前回は話し合いで決まったが、

「今回は恨みっこなしで、くじ引きにしたいんです」

 言い出したのは翠である。

 一年生で生徒会長までなった翠は、

「上昇志向の強い女」

 と見られる向きが強く、今回も我を通すものだと誰もが感じていたし、疑う余地はなかった。

 が、しかし。

「別に武装する必要がなくなった」

 だから生徒会長も次は選挙は不出馬、というようなことを翠は言った。

 素直になると、こんなに人は変わるのかと目をみはらされたが、可愛らしさが出てきたのか、前のような鋭い口振りはかなり減った。

 攻撃性がなくなると翠は奇妙なぐらい回転の良さを発揮する。

「あれは使い方やろな」

 しかし組織で使えるかどうかは別、とも清正は評している。

「あいつが使えるポジションは二番手。しかし二番手は信頼性がないとつとまらん仕事で、果たして軽薄な面があると、さぁどうなるか」

 何やら批評めいたようなことを言った。