飛行機で新千歳に着くと、さらにすごかった。
初出場初優勝という快挙、さらには最年少受賞というダブルの達成を成し遂げたアイドル部を、メディアは放置しない。
バスターミナルで乗り込む際には、知らない男から雪穂が肩を掴まれそうにもなった。
幸い空港の警備員がすぐ引き離して怪我らしいケガはなかったのだが、
「ネームバリューの引き換えって、こういうことなんだろうね」
雪穂は醒めたことを言った。
「私たちが目指していた未来って、こんなんだったっけ?」
あやめの一言が、唯は痛かった。
札幌の校舎へ帰ると、さらに出迎えが増えていた。
澪に至っては、
「あんなにいたら近づけなくて」
恐怖しかなかったらしい。
報告会が道庁の旧庁舎前で行われたのだが、このときには数百人が集まって車道にまで人が溢れ、隣の道警から人が出張る騒ぎとなっている。
時の人となったアイドル部ではあったが、
「私たちは有名になりたくて頑張ったんじゃなくて、ただみんなを楽しませたくて、アイドルになったんだけどね…」
唯の部長としての苦悩は、そんなところにあったのかも知れない。