チェックアウトの前日。
ホテル側のはからいで、祝勝会と受賞パーティを兼ねた祝宴が開かれた。
「まことにおめでとうございます」
いざ夢が叶うと、何をして良いのか分からなくなるということを初めて体験している。
唯と藤子が並んで座った。
「ののか先輩、面接で決まったみたいだよ」
直前にLINEが来たらしい。
華やかな料理がならび、メンバーの中には少し舞い上がってしまっているのもある。
「あれをどう引き締めるかが課題だよね」
マヤの意見が正鵠を射ているように、藤子は思われてならなかった。
事実、翠なんかは舞い上がって無断で外出してコンビニの新聞を買い、長谷川マネージャーから大目玉をくらっている。
清正は一言だけ、
「ワイの片目と引き換えやったんかな」
次に優勝するときはどこが引き換えなんやろか、と笑いを誘ったが、あの投げ込みを知るすみれだけは、どうしても笑えなかった。