唯は藤子とは幼稚園からの間柄で、洋裁の講師の娘で、習ったことはないが門前の小僧でミシンを扱うのが得意な唯は、度々藤子の衣装をミシンで縫ったりしていた。

 そのうち、

「私も衣装着て、ステージ立ってみたいなって」

 たまたま唯の母親がよさこいソーランのチームにいて、ダンスや芸能に対して理解があったのも、好都合であった。

 よさこいソーランのチームにいたこともあったが、

「あれは体育会系で上下関係が超厳しくて、私には合わなかった」

 唯は頭ごなしに言われると、依怙地になって逆のことをしたがる癖があった。

「だって藤子ちゃんが着る衣装って、デザイン可愛いからさ」

 ちなみにデザインは、萌えキャラを描くのが好きで絵の上手いののかが決めていた。

 たまに気分がクサクサすると唯は、家から持って来た、父親から譲られたアコースティックギターを弾いて、部室で唄うときもあった。

「別に習ってないから独学なんだけどさ」

 とは言うものの、左利きの唯は慣れた調子でレフティーに構えると、椎名林檎や西野カナのナンバーをよく好んで唄ったりもした。

 頭抜けて上手い訳ではなかったが、しかし少しかすれたファルセットがちょっと大人びた印象をあたえていた。