翠を見つめながら唯は、

「翠には重要な役割をお願いしたいんだけど、いいかな?」

 と、近くに招いた。

「あなたにはカメラをお願いしたいんだ」

「カメラ?」

「ただのカメラじゃなくて、私たちの証拠を永久に遺すための仕事を頼みたい」

 翠のプライドをくすぐるような言い方をした。

「大切な役割を託すから、お願いね」

 翠は力強く承諾した。



 部屋に戻る廊下で、優海は唯に訊いてみた。

「なんであんな大げさに?」

「あの子はプライドが高いから、ああやって多少オーバーに言ってあげたほうが、よく動いてくれるでしょ?」

 唯らしい観察眼のなせる技であろう。

「人は頭ごなしに怒鳴ったって動かない。むしろ気持ち良く仕事をさせるほうが、回り回って効率的に進む」

 いつの間にか唯も、部長らしくなっていたらしい。