茅ヶ崎の海岸通に面したホテルが、合宿の宿舎である。
大学の講義の合間を縫うように、ののかも姿を見せるので不安もなく、至って順調に調整が始まった。
合宿開始から五日目の夜、宿舎のホテルに電話が入った。
「ライラック女学院高等部の長内藤子さまへお電話です」
一同訝ったが、藤子自身と、長谷川マネージャーだけは薄々気づいていた。
「アカシア出版編集部編集長、星さとみといいます」
弊社の月間青少年文学誌・エメラルドスターに掲載されましたのでお知らせします、との由であった。
メンバーは仰天した。
いや、仰天したというレベルでは済まされない騒ぎとなった。
「藤子ちゃん、小説書いてたの?」
「うん…ライトノベルみたいのだけどね」
唯だけは驚かなかった。
「昔から空想とか物語とか好きだったもんね」
でも夢を叶えるとは思わなかった、と唯は言った。