バスが茅ヶ崎の宿舎に到着すると、

「私はこれで帰ります」

 茉莉江はミッションクリアといったような顔つきをした。

「帰っちゃうの?」

 ののかが訊いた。

「だって宿決めてないし」

「うちに泊まれば? だって実家手伝ってるんだし、たまには息抜きしないと…」

 ののかは引き留める。

「…じゃあ、明日まで」

 茉莉江はスマートフォンを取り出し、何やらメッセージを打ち始めた。

 しばらくして、返信が来た。

「先生もいるしって、OK出た」

「良かった」

 ののかははしゃぐように喜んだ。