バスに乗り込もうとしたときである。
「お屋形さま!」
清正に近づいてきた一人の老父がいる。
「おなつかしゅうございます…爺でございます」
顔を見て清正は驚いてから、
「爺やないか!」
「すっかりご立派におなりあそばしまして…」
しかし例の眼帯姿である。
「独眼竜に、おなりあそばしましたか」
「なーに、戦傷みたいなもんよ」
爺はかしこまってからメンバーたちを見るなり、
「これ、こちらにおわすお方を、何と心得る!」
清正は苦笑いした。
「畏れ多くも丹後和泉崎藩三万七千石、旧子爵嶋長門守さまの末裔、清正公なるぞ!」
まるで時代劇さながらのセリフにメンバーはあっけにとられた。
「今はただの教師や。また改めて積もる話をしよう」
「ハハッ」
老父は丁重に頭を下げると、杖を手に去ってゆく。