ようやく衣装も決まり、期末テストも終わった七月はじめ、最終調整を兼ねた合宿のため、メンバーのうち生徒会長の翠は残し、美波や長谷川マネージャーらと九人は、昼前の羽田行きで新千歳から飛び立った。

 新千歳までは澪が見送りに来た。

「私たちの夢を託すから、頑張って!」

 澪が携えてきたのは御守である。

「ひさびさにミシン使ったから不細工だけど」

 しかし「必勝」とあるフェルトの手作りの御守を渡されると、

「仲間は、信じるもの」

 というフレーズが、唯の脳裡によみがえった。

 清正は今日退院の予定で、茉莉江が市立病院まで迎えに行っているはずである。

「次の飛行機で行くから、一時間遅れだって」

「先生、どうなるんだろうね…」

 唯は飛行機の中で、隣席のマヤに話しかけた。

「本人は強がってるけど、奥さんいるから大丈夫だよ、きっと」

 それならいいけど、と唯は雲の波が広がる窓の外に目をやった。