清正が意識を取り戻すと、市立病院の集中治療室であった。
「緊急手術をいたしました」
ぼやけた左目で、医者を確認した。
「残念ですが、右眼は失明状態です」
「そんなことはどうでもえぇ、とにかく安達は…安達くんは無事か?!」
清正にすれば、茉莉江に怪我がないかどうかのほうが大事であったらしい。
「同行された方は無事です。かすり傷ぐらいでした」
「それなら、えぇ」
清正は安堵したのか、深い息をついた。
後日このときのことを問われると、
「嫁入り前の顔に傷はつけられへんかった」
自分は男なので、むしろ顔の傷は勲章である──と言い、笑い話にしていた。