六月の雨上がりの日曜日。
メンバー全員と清正、美波、そして澪と、澪に誘われて来た安達茉莉江は、ハマスタの全国大会の戦勝祈願のため、北海道神宮へ参拝しに出向いた。
セーラー服姿で玉砂利を踏みしめるメンバーが、神職に先導され、厳かな本殿へ整列して歩いてゆく。
清正はスーツ姿である。
リクルートスーツ姿の澪や茉莉江もいる。
この頃には有名になっていたアイドル部が突然あらわれたので、参道は急に騒がしくなった。
スマホを構えて写真や動画を撮る若者、手を振って歓声をあげる修学旅行らしき中学生たち、中にはグッズを手に名前を呼ぶファンらしき男もいた。
本殿で祈祷が始まり、床几に腰を下ろしたメンバーや一同が祝詞を受ける中、一人だけ異彩を放ったのは清正である。
スーツの上から陣羽織を羽織っていた。
後に分かったことだが、西陣織できらびやかに仕立てられた、片身変わりと呼ばれる壮麗なもので、背には嶋家の桧扇の定紋が大きく刺繍されてある。
祝詞が済むと、清正と部長の唯が玉串を奉奠する。
一同で柏手を打ち、二礼二拍一礼で祈祷は終わった。