翌日から、
「みな穂ちゃん、ちょっとお願いがあるんだ」
と藤子はみな穂に、自分が獲得したノウハウを一つ一つ、しかし確実に伝授してゆくことにした。
「みな穂ちゃんは私が憧れだって言ってくれたから、だからあなたに託す。その代わり、ちょっと厳しいよ」
藤子は笑顔を見せた。
それにいち早く雪穂が気づいた。
「藤子ちゃんの覚悟がそこまでなら、私は止めないよ」
「雪穂は雪穂のままでいいんだよ」
雪穂は帰り際に翠に、
「藤子ちゃんを助けて欲しい」
翠は瞠目した。
「私が?」
「翠、…挽回するなら今だよ」
こういう言い回しのチョイスが雪穂を小悪魔たらしめている。
「だって翠、アイドルになりたいんだよね?」
それだけ雪穂はささやくと、スッと教室から消えた。