しばらくみな黙っていたが、やがておずおずとすみれが口を開いた。

「じゃあ、この場で念書書いて」

「それはさすがに…」

「私がいる事務所は、すべて約束事は紙に残す決まりだから」

 それが出来ないなら破談かすみれが退部するか、だという。

「またそういう話…?」

 藤子が思わずつぶやいた。

 グループ名のことを思い出したらしい。

「藤子ちゃん…」

「…分かった。紙切れ一枚で済むなら、何枚でも書くわよ」

 いつもの翠が戻って来た。

「じゃあ決まりね」

 パソコン机にいた優海がコピー用紙を取り出した。

 こうして。

 念書を翠は軽い気持ちで書いたのだが、やがてこれが、翠自身に結果的には跳ね返ってくることとなるのであるが、このときの翠は当たり前のことながら知らなかった。