こうして昼休憩の頃には、リノベーションも落ち着いてきたので、部室脇の広場で皆で弁当を広げたのであるが、自然と話題は清正のユニホームのことになった。
「先生、野球部だったんですか?」
切り出したのは藤子である。
「一応、甲子園までは出れたけど、優勝はなぁ」
初戦で優勝候補に当たってホームランだけで七点打たれて三イニング保たなかったこと、それでプロは諦めて教師になった話をした。
「甲子園かぁ…テレビでしか見たことない」
女子高だけに野球部はないが、今はサラリーマンである澪の父親が、かつてアマチュア野球の選手だったらしく、
「だから夏休みになると毎日テレビかかってて」
何となくだがルールはわかるらしかった。
「まぁうちは、京都の田舎の普通の府立高校やからねぇ」
京都の市内から電車を乗り継いで二時間ばかり行った山の中らしく、
「せやから札幌来たとき、えらい都会に来たなーって」
今だに札幌駅のパセオとかステラプレイスとかアピアとか、あのへんの地下街で迷うときがある、と清正は苦笑いした。