週末。
再び翠が部室にやってきた。
「…おはよう」
いつもの「ごきげんよう」ではなかったので全員身構えたのだが、
「あのね…」
翠は目を潤ませていた。
「雪穂、ちょっと」
雪穂の手を引いて外へ出た。
「こないだはごめんなさい」
「私は気にしてないよ」
雪穂は声を荒らげることが少ない。
「でも素直じゃないよね…よっぽどのことがあったのかも知れないけどさ」
雪穂はおっとりしているが、頭が悪い訳ではない。
何か見抜いている。
「実はね…あやめちゃんの件があったじゃない?」
雪穂は勘が働いた。
(あ、やっぱりこの子もいじめられてたんだ…)
後日、雪穂の読み通り中等部時代にかなりいじめられて引き籠もっていた時期があったらしかった。