数日後。

「ごきげんよう」

 と取り澄ました顔の翠が、朝練でグランドに集まっていたアイドル部の集団に近づいてきた。

「あ、セラミックスおはよー!」

 マヤがコスプレイベントで鍛えた声を張り上げると、登校中の生徒たちが振り向くほど、周りの手稲山にも響いた。

 全員、マヤに注目がゆく。

 そこをマヤは逃さない。

「こないだは初音ミクのグッズ、見せてくれてありがとねー!」

 これをやられては、翠も形なしである。

 翌日から翠はセラミックスというあだ名で呼ばれ、のちに余談ながら卒業後しばらくして、結婚式の披露宴までそう呼ばれ続けるに至る。

「あれでアイドル部ディスれたら、あの子かなりの大物なんだけどね」

 美波が卒業しても、代わりにマヤというキャラクターが似たようなことをする。

「代わりって、あらわれるんだね…」

 千波は目をシバシバさせた。